出産と周囲の方のサポート
出産は命がけ
出産すること、妊婦さんにとって命がけです。経膣分娩でも帝王切開でも、楽に産む、ということはありませんよね。陣痛の痛みは計り知れないものです。
何時間かかるかは人により、あとこれぐらいで終りますよ、と言えることではありません。帝王切開では麻酔はするものの、麻酔はいつか切れます。お腹を切っているし、子宮も切ってるし、それを縫い合わせています。さらに経膣分娩でも帝王切開でも、後陣痛といって、大きくなった子宮が元に戻るために収縮するので、そのたびに陣痛のような痛みが産後にもかかわらずやってきます。
出産が終っても、後陣痛、乳房の張る痛み、会陰切開部や帝王切開創の痛み、そしてホルモン変動による気もちの落ち込みなど・・・出産による体や心への負担はすさまじいものです。
よく、出産は「全治1ヶ月の交通事故に遭うような出来事」と比喩されます。これは、決して妊産婦さんを怖がらせようとしているのではなく、「妊娠・出産・育児は女性なら当然できて当たり前」という偏見を少しでもなくし、家族や周囲のサポートが当たり前となるように、イメージしやすい表現になっていると思われます。
産後の気もちの変化
産後は経膣分娩、帝王切開にかかわらず、体のホルモンの変化により精神的にも不安定さがでてきます。
- 不安
- 涙もろさ
- 怒りっぽい
- 神経質
人によって症状の出方は違います。またその人の状況によっても大きな違いがみられます。
病院、助産所、行政では産婦さんの精神的サポートをするために、アンケートを行い、点数化、その方の状況やサポート体制をお聞きして、その方に合わせた援助ができるようにしています。
産後に精神的に不安定になること、マイナスなイメージがあるかも知れません。しかし、これらは大昔から、人間が子孫を育てていくために必要な変化だとも言われています。
不安がつよくなること…赤ちゃんの健康状態を心配する気もちがつよくなり、少しの変化でも気づきやすくなる。用心深くなる。
涙もろくなること…他人の出来事でも、悲しいニュースなどを耳にすると感情移入する。愛情深くなるり、他人に対しても優しい気持ちが強くなる。赤ちゃんの感情も敏感に受け取り、赤ちゃんが何を欲しているか、言葉を交わすことができなくても分かるようになる。昔の人は、近所の人は現在よりも身近で、お互いに協力し合い助け合っていた。感情を出すことで、周囲に助けを求めることができる。
周囲のサポートがあるかないか
家族が一人増えるといっても、人によって状況がちがいます。ご夫婦にとっての初めてのお子さんであるか、2人目、3人目であるかもそうですし、上のお子さんとは違うパートナーとの再婚後の出産である場合も、もちろんあります。
産後実家に帰省してサポートしてもらえる方もいらっしゃいますし、実家が遠方だったり、実家とは疎遠、実父母さんの仕事やご病気などにより実家からのサポートが受けられない方も多くいらっしゃいます。
また海外から日本にお仕事に来ている方も最近は多く、帰国せずに異国の地である日本で出産する方も増えています。
- だれがどれだけサポートできるか
そのような状況において、「だれがどれだけママと赤ちゃんをサポートできるか」ということが大切になってきます。
「母乳を与える」事以外はだれでもできます。まず抱っこ、オムツ交換、ミルク作りとミルク授乳、沐浴、へその消毒、寝かしつけ、上の子を連れ出し遊ぶ、料理、洗濯、掃除、買い物、茶碗洗い、お風呂の掃除・・・
これだけのことを産後のママが一人でこなすのは、体にとって負担は大きく、また孤独でもあります。
- パートナーがいる場合
1 パートナーの育児休暇取得
公務員や会社員であれば、育児休暇を取得できる職場も増えてきました。日本はまだまだ取得率は低いと思われますが、もし会社に申請して取得できるのであれば、是非取得し「育児」に専念する時間を増やしましょう。
ただし育児休暇は遊ぶためのお休みではなく、産後の女性の体をいたわり、また育児技術を向上させて「育児の大変さも一緒に味わいつつ、一緒に子どもの成長を喜びあう」ための休暇です。
ママは、「一緒にやりたい」し、「一緒に味わいたい」し、「一緒に喜びたい」のです。
出産後、「愛する妻(パートナー)が変わってしまった」と感じている方、変わるべきはあなたです。お腹の中で自分ではない「命」を育て、「命がけ」の出産を経験し、引き続き「小さなかけがえのない命」を育てている責任。
変わらないはずはありません。ママの心の中は赤ちゃんのことでいっぱいで、パートナーであるあなたのことは2番目です。「愛する妻(パートナー)」にこれからもずっと「愛されたい」のであれば、妻(パートナー)が今1番に考えている「子どものこと」をあなたも1番に考えましょう。